***東日本大震災について**************
坂本 宜しくお願い致します。
鳥海 宜しくお願い致します。
坂本 第三回目ゲストは、鳥海光弘先生です。鳥海先生は、地震、地質学がご専門と聞いております。先生、今は何をされてますか?
鳥海 はい。私は2年前まで東大の柏キャンパスで教えてました。現在は、海洋研究開発機構(JAMSTECジャムステック)におります。
鳥海光弘
独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC) 地球内部ダイナミクス領域長
鳥海光弘先生プロフィール(JAMSTEC_HPへ)
坂本 海洋研究開発機構では、どのようなお仕事を?
鳥海 ここでは、地球内部の研究とそのマネージメントが主たる業務になります。
坂本 海洋研究開発機構とは、どのような研究機関ですか?
鳥海 研究船を七隻所有してます。「ちきゅう」もあります。地球の内部の構造を探ること。地震のメカニズムを調べること。また、海底で、どのような生物が生息しているかなどを調べてます。*ちきゅう 人類史上初めてマントルや巨大地震発生域への大深度掘削を可能にする世界初のライザー式科学掘削船。
坂本 そもそも海底の生物ってどうやって調べるんですか?
鳥海 海底5,000mぐらいのところを掘っちゃうんです。そこから、1,000mぐらい先まで。
坂本 掘っちゃうんですか?
鳥海 掘って調べると、泥の中にバクテリアが、いっぱいいるんです。信じがたいですね。だって、海底5,000mって物凄い圧力ですよ。
坂本 5,000mぐらいだと、どれ位か・・・確か・・・
鳥海 そう、500気圧くらいかな。高圧の状態でも生き残ってしまうわけだよね。
坂本 確かにすごいですね。
鳥海 特徴的なのは、物凄く活動が遅い。つまり、細胞分裂も、人間に比べれば物凄いゆっくりなのが特徴的ですね。
坂本 そうすると、地底の生物の状態なども含めて研究していくと、プレートの状態なども分かるということですか?
鳥海 そうです。それを調べることも重要なことです。
坂本 どうしても今回の対談でお話から外すことができませんが、専門家から見て3月11日の東日本大震災は、起こるべくして起こったと言えますか?
鳥海 はい。2011年から2015年ぐらいの間には、マグニチュード8クラスの地震は、仙台沖であるとは言っていました。ただ、多くの専門家は、岩手沖から福島沖までの500kmで、プレート境界が割れるとは思わなかった。境界は細切れになってると思っていました。多くの専門家は、岩手沖から福島まで500kmが割れるとは思わなかったんです。
坂本 そうですか。
鳥海 仙台沖で、マグニチュード8クラスの地震だと、仙台周辺は震度6から6弱の地震が起きます。また、津波も、5mほどの津波は確実に来るという事は分かっていました。これについては、しっかりと警戒してました。結局、3月11日にもっと巨大なのが起きてしまったんですね。
坂本 他にも地震が起きると言われている場所がありますが?
鳥海 東海、東南海地域。あとは四国の南海地域はよく言われていますね。
坂本 結局、日本中どこにいても、大地震が起こる可能性は・・・?
鳥海 そうです。1995年の阪神淡路大震災。あそこでは、地震は起こらないと思われていた。でも、起こったわけですね。
坂本 そうでした。
鳥海 2000年には、鳥取の西部で(鳥取県西部地震)。次に能登半島沖(2007年能登半島地震)。後者は、たまたま、”バン”と割れたから津波は起こらなかった。”ズルズル”だったら津波が起きたんですね。
坂本 ”バン”と”ズルズル”で違うんですか?
鳥海 そうです。地震は音と深い繋がりがあります。あとは、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震、2008年岩手県沿岸北部地震、最後の2008年の岩手県沿岸北部地震この15年の間に立て続けに起こっているわけです。驚天動地の世界ですね。
坂本 北海道でも起きましたよね。
鳥海 2003年十勝沖ですか?プレート境界ですね。根室、十勝、青森も要注意地域になりましたね。
坂本 首都でも、首都直下型地震が起きると言われていますが、これも前から言われていた?
鳥海 2002~2003年くらいから分かってきました。相模湾から東京の真下にある、プレートが良く見えて来たんですね。重なり合っているプレート付近で、マグニチュード5から6クラスの地震が計測されています。
坂本 それは、地震計で観測できるんですか?
鳥海 そうです。活発化してますね。
坂本 よくテレビなどでも、プレートが活発化している、プレートが沈み込んでいるという表現を聞きますが、実際に掘って調べるんですか?
鳥海 そこは深すぎて掘れないですね。
坂本 どのように調べるんですか?
坂本 真一
オトデザイナーズ代表取締役 工学博士 「伝わる」技術 著者
2012年任天堂から発売された、Wiiソフト「キキトリック」を共同開発
鳥海 一つは、GPSですね。日本列島のGPSステーションって一千カ所以上あります。絶対位置の差分で分かるんです。
坂本 なるほど。表面の動きはGPSで見て、中の動きは推測ということですか。音響探査でわからないのかな?と思ったんですが・・・
鳥海 音響探査もやってます。船の上から音波を出すわけです。規則的にバンバンと。深さ5,000m先が岩石ですし、途中は海ですから、馬力の強い音を。ハイドロフォン(水中マイク)を並べて、反射した音を拾って、反射構造図を見てます。
坂本 それって、超音波診断装置に近いですね。
鳥海 そうです。その原理に近いと思います。これが、非常に綺麗に見えるんですね。
坂本 多分、超音波でやれば細密に見えますが、海の中では音波が届かないですね。
鳥海 長い波長じゃないと届かないです。
坂本 でも、長い波長で、しっかりと見えているというのは凄いですね。
鳥海 はい。東日本大震災の起きた後とそれ以前のデータを見比べると今回の地震で何が起きたのか、起こったのか、ということが見えて来るわけです。