特別企画 対談

特別号
「男性と女性、高齢者と若者の聴覚心理学」
~傾聴だけでは足りない!伝わるコミュニケーション方法の伝授~

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Ⅰ.そもそも音とは何か?

Ⅱ.聴覚心理とは


Ⅱ.聴覚心理とは

9.聴覚心理とは

和光市講座

さて、ここから聴覚心理とコミュニケーションについてお話をして行きたいと思います。初めに聴覚心理とは何かについてお話します。聴覚心理とは、耳に入ってくる音の物理的な特性とその音が耳に入って来た時に人間の感覚がどうなるのか、聴覚系がどのように働いているのかを知る学問になります。簡単に言うと、音がどのように聞こえて、その時どのように感じるのかということです。相手の心が分ったりするわけではありません。ましてや、どのような声が異性にモテル声なのかという学問ではないのです(笑)

10.男性心理と女性心理と聴覚心理

聴覚心理という言葉を理解していただいたので、最初に男女の聴覚心理に差があるか?についてお話しをしたいと思います。結論から言うと、男性と女性で、音を聞き取る能力にはそれほど差がないと言われています。ただ、聞き取った音を分析する能力や傾向には差があると言われています。例えば、1分間にいくつ単語を言えるか?、一つの単語からいくつの言葉や単語を連想できるか?という実験をすると、明らかに女性の方が能力が高いという結果が出ています。小さいお子さんをお持ちの方は実感としてあるんではないでしょうか?女の子の方がおしゃべりですよね?(笑)聴覚心理ではなく心理学の実験データですが、男性は新しいものや過去に経験がないものを敬遠しがちで、女性は新しいものや過去に経験がないことにワクワクするという結果もあります。あと、女性は社会的知覚能力が優れていると言われています。社会的知覚能力とは、言葉以外から得る情報取得能力ですね。声の調子であるとか、身振り、表情の変化などから、相手の変化を敏感に察知する能力です。それこそ、靴下の柄までチェックする人とかいますよね(笑)年配の男性の中には、商談中に腕を組んで、目を閉じて、じっと耳を澄まし・・・気付いたら寝ていた・・・ということは少ないと思いますが(笑)・・・女性で腕組んで目も閉じて人の話を聞くという人は、あまりお目にかからないですね。つまり、相手を観察し、言葉以外の変化を察知する能力は女性のほうが高いと言えるんです。以上のことを踏まえると、話す相手が男性の場合は、途中で話を挟んだりせずに、相手の話が終わるまでじっくり聞いてあげる。女性の場合は、相槌や、やり取りを意識するとコミュニケーションが上手に取れるということが言えます。

11.高齢者と若者

聴覚は20歳を過ぎると悪くなるのという話を冒頭にしました。単純に言ってしまうと、内耳にある有毛細胞が年を取ると抜けるんです。抜けると、毛がないので細胞から活動電位が出ないので聞えないんですね。先ほど、の内耳の話の時に、数万本並んでいる細胞のうち、外側の方が高い周波数の音を担当しているという話をしましたが、抜け毛は渦巻きの外側から内側へ進行していきます。つまり、高い周波数の音から聞えなくなっていくんです。一時期、モスキート音って、流行ったのを覚えていませんか?コンビニの前に若者が集まらないようにって・・・。このモスキート音って、若い人は聞えますが、年配の人はほとんど聞えないですね。若い人は毛がフサフサしているから聞えるんですね。また、年を取ってくると、一箇所だけで集中的に抜けるわけではなく、まばらに抜けていくんです。まばらになると音の高さの微妙な変化が分らなくなるんです。つまり、言葉の微妙な変化が分り難くなります。たとえば、“し”と“ち”の違いとか。毛が薄くなったり、まばらになると、脳に行く情報が少なくなるので、言葉の違いの判断が出来なくなってしまうんですね。もちろん、個人差はありますが。

耳のチェック

ここで、皆さんの抜け毛検査をしたいと思います(笑)今から6種類の音が4回ずつでますので、何種類聞えるかご自身でカウントしてみてください。

*テスト

どうでしたか?ご自身の毛の抜け具合。分かりましたか。

12.老人性難聴

内耳の抜け毛の話をしてきました。最後に抜け毛が原因で聞こえなくなる、老人性難聴の特徴についてまとめたいと思います。

●高い周波数が聞えない

高齢になると高い周波数が聞えなくなってきますので、虫の声や電話の呼び出し音。あとは体温計の音などが聞えない、聞え難くなってきます。ただ、高い音だけが聞えない場合は、コミュニケーションだけを取ってみれば、それほど大きな問題にはなりません。

●リクルートメント現象

問題なのは、小さい音は聞えなくて、大きい音はうるさいと感じるという、専門用語でいうとリクルートメント現象という症状です。これは問題です。先ほどの毛の話をしましたが、毛があると大きな音が入って来た時に蓋にぶつからない様に、毛がクッションの役割をしたりもするんですが、毛が抜けると、大きな音が入って来た時に、クッションが働かずに、大きな音はうるさいと感じてしまうんです。

●周波数分解能が落ちる

コミュニケーションでは、これが一番大変です。専門用語でいうと周波数分解能が落ちると言います。先ほどの話で言うと毛がまばらになってしまうということです。まばらになると、音の高さの微妙な変化が分らなくなるので、言葉の変化が分り難くなります。また、正確に情報が伝わらないので、割れたり歪んだりした音として聞えてしまいます。

●時間分解能が落ちる

脳の機能が低下したからだと単純に言われる場合もありますが、最近の研究では、それに加えて、内耳の機能が低下すると脳に行く情報が少ない、情報が行かなくなる、ゆがんだ情報が行くなどのために、早口が分らないということが分っています。

今お話したことは、決して精神論では片付けられない話ですね。聴覚心理を理解していただくことにより、高齢の方とのコニュニケーションが円滑になると思います。

13.聞き分けづらくなる言葉

老人性難聴になると聞き分けづらい言葉というのがあります。これも覚えて帰っていただくと役に立つと思います。難聴のパタカと言われたりもしますが、パ行、タ行、カ行の聞き分けが難しくなります。たかさき(高崎)、しっしん(湿疹・失神)、パンツなどが代表的な言葉です。また、サ行の、特に“し” は周波数が高いので聞き分けが難しくなります。母音については“い”“う”です。例えば、いし(石)、うし(牛)は聞き分けが難しいですね。

14.老人性難聴との接し方

それでは具体的にどのように接すればいいのかお伝えします。まずは、大声で話しては絶対に駄目です。これは精神論にもなりますが、まずは相手の話しを出来る限り聞き、理解するということです。相手が何を伝えたいのか、聞きたいのか分らない状態で、聞こえがこのようになっている人に、こちらの主張ばかりをまくしたてても先には進めません。次に、やや大きめの声でゆっくりとはっきりしゃべってください。ここでいうはっきりは、口を大きくあけてしゃべるといいでしょう。次に、絶対に大声にならないように。また、応対マニュアルなどがある場合は、マニュアルを見直しましょう。先ほどのパタカが沢山あるような言葉があれば、違う言葉を使って受け答え出来るようにマニュアルを変えるといいです。聴覚心理的には、語頭に力をいれて長めに話すと相手に伝わります。あとはオノマトペ(擬音語)を使うと、感性に上手く訴えかけられますので相手に伝わりやすくなります。

さて、最後に模擬難聴を体験していただきます。

*体験

読者はYouTubeオトデザイナーズチャンネルで体験して下さい

模擬難聴如何でした?皆さんの声が高齢者には、あのように聞えます。少し歪んだような・・・。言葉の選び方を気をつけたり、力の入れる箇所を気をつけるだけで、精神論だけではなく、テクニックとして高齢者とのコミュニケーションを円滑に行えるようになることが、ご理解いただけたでしょう。

本日の研修が皆さんのお役にたてればと思います

ありがとうございました (終り)


講習を受講された皆様からのお声

・窓口対応、電話対応に対する生かせる内容でした。坂本氏の本を読んでみようと思います。本日は参考になる研修をありがとうございました。

・自分の母親も高齢で、耳が遠くなっているため、とても参考になりました。

・高齢者の来庁者に対し、つい大声で話していたので、今日の話を聞いて大変参考になりました。

・とても興味深い内容でした。話だけでなく、参加型だったので楽しく、より深く理解することができました。もっとお話を聞きたかったです。

・普段、あまり意識したことのないテーマで興味深く受講できました。模擬体験も大変参考になりました。

・難聴が具体的にどうなるかのイメージができ、とても参考になりました。

・お客様とのコミュニケーションだけでなく、親族とのコミュニケーションにも利用できる講座で参考になりました。

・耳のメカニズム、聴くことの意味、おもしろくて楽しい時間でした。


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