特別企画 対談

vol.6 「シニア(高齢者)と聴覚心理」

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**** クレームはチャンスの宝庫 **** 

坂本 実際に、対面での顧客接点というケースはありますか?

木下 弊社ではあまり行なっていません。

坂本 そうですか。冒頭、シニア(高齢者)の方は電話を良く利用され、若者の問い合わせは多岐に渡っているというお話をしていただきましたが、コールセンターは世相を良く表わしていますね。この話はいろんな業種の方に参考になると思います。若者は緊急でないと電話しないですね。すぐに携帯やスマホでポチポチ調べたりします。シニア(高齢者)は直ぐに電話かけますね。

木下 そうだと思います。

坂本 ただ、視覚でコミュニケーションを取るようになったのは、ここ15年くらいの間ですよね。携帯やスマホが普及してからです。それまでは、人類が始まってから、ずっと聴覚でコミュニケーションを取っていたわけです。そういう意味では、コミュニケーションを取る必要のある企業は物凄く大変な時期ですね。20年から30年経つと視覚コミュニケーションで育った世代が増えてきますので、また、やり方が変ってきますし。当分は両方が混ざっている時期ですが、企業にとってみれば、まだまだ色々なチャンスがありますね。

竹内 チャンスですか?

坂本 ネットが普及していますから、お客様と直接話す機会って少なくなっていますが、シニア(高齢者)の人は電話をしてきてくれます。

竹内 そうです。

坂本 特に、クレームという表現が良いかは分りませんが、お客様って興味のないものにはクレームを出さないって、第1回目のこの対談のゲストの元トンボ鉛筆の笠原先生がよく仰います。

竹内 なるほど。

坂本 クレームはチャンスの宝庫です。お客様の側から、興味のある部分を知らせてくれるんですから。クレームからヒントに繋がって商品開発に繋がりますので、シニア(高齢者)の対応をしていくことは、その企業の新しいチャンスに繋がるかもしれません。ちなみに、クライアントには、どのような形でクレームなどを報告されるのですか?

木下 報告は様々ですね。集計表という形で件数を報告する場合や、何を言っているのか正確に知りたいというお客様には、内容を正確に書き起こして報告します。そこはお客様がありますので様々です。

坂本 なるほど。

木下 冒頭話をした+αの付加価値を考える我々としては、その内容をテキストマイニングにかけることもあります。実際に何が起こっているのか、その背景にある“何か”が知りたいですね。考察し、文脈化し、分析し、ご報告をすることが、先ほどから言っている+αになるのかと、思っています。

*テキストマイニング:文章の集まりを自然言語解析などの手法を使って単語やフレーズに分割し、それらの出現頻度や相関関係を分析して有用な情報を抽出する手法。

坂本 なるほど。

**** 優しい=同情ではない **** 

木下 シニア(高齢者)のお客様って直ぐに怒るって言われていますが、そこの部分を深掘りしたいです。本当に怒っちゃう人たちなのか?違うのではないのか?怒る原因は何なのか。聴覚の問題もあり、それ以外にもあって、その部分を深掘りしていかないといけないと思っています。クレームと呼ばれる問題も、深掘りしていかないと問題が見えて来ませんね。

TMJ木下

坂本 “怒る”というキーワードで聴覚的に考えると、相手が何を言っているか分らないときって物凄く腹立つんですよね。

木下 そうかもしれません。

坂本 そういった意味では、今回のツールを実際に現場のオペレーターの方に使っていただくことで、シニア(高齢者)の方って、普段私達が聞こえているようには聞こえていないということを理解していただけると思います。

木下 はい、そうですね。

坂本 オペレーターは、シミュレーションの時だけ、あの音を聞くわけですが、シニア(高齢者)はずっとあの状態の音を聞いているわけです。精神論的に「シニア(高齢者)には優しく接しなさい」というより、実体験すれば、自然に優しく接することができると思いますね。

木下 確かに。そうですね。あの音で、ずっと聞いていると思うと確かに辛いですね。

竹内 誰しも主観はありますから、シニア(高齢者)だから優しくしなさいと言われても、言われただけで「そうだな」と思う人もいれば、???と感じる人もいると思います。ただ、シニア(高齢者)になると誰もが耳が悪くなり、あのような音で聞こえているという風に理解ができれば、シニア(高齢者)に対する接し方も変ってくるのではないか思います。

坂本 そうですね。優しい=同情ではないですからね。優しさって、お客様の側が、優しく応対して貰ったと感じるかどうかが重要で、こちら側が精神論的にシニア(高齢者)には優しくしなければいけない、した、という事ではないですから。

竹内 そうだと思います。

木下 坂本さんとお話する前は、我々はシニア(高齢者)を理解するというよりも、シニア(高齢者)の方を理解する。というか、しようと思っていました。ただ、そこの部分は正しくなかった気がします。シニア(高齢者)を正しく理解して、正しいオペレーションをするべきだ、正しい理解というのを教えて貰ったなと思いました。

坂本 それは良かった!

木下 先にセミナーをしていただきましたが、我々もシニア(高齢者)のオペレーションの研修をしています。そこでは、ファクトベースで正しく理解をしていきましょう、きちんと盛り込んで理解して貰おうと、そういう対応になっていきますね。若干、生産性は落ちるんですけれども。

坂本 確かに、相手の言いたいことをしっかりと聞いて、こちらの伝えたいこともしっかりと伝えようとすると生産性は落ちますね。ただ、これも、決められた時間の中でという考えですと、もちろん落ちますが、その後、理解出来ないで2度、3度と電話をかけられて応対するということを考えると、トータル的には生産性は上がるという考え方もできますね。

木下 その通りだと思います。二度手間になったりしなければ生産性も上がりますし、応対のクオリティーも上がりますしね。競合他社の動向は全てわかりませんが、他社よりはきちんとオペレーターに理解できるような動きが、先んじて取れているのではないのかと思っています。

坂本 シニア(高齢者)対応って昔から言われていますが、日本はどちらかというと対応していないですね。今回のこの取り組みは、日本の企業のトップを行くような先進的な取り組みだと思います。

木下 ありがとうございます。


**** シニア(高齢者)層がオペレーターに!? **** 

坂本 最後になりますが、この後、どのようなことを取り組まれていきますか?お答えいただける範囲で。

竹内 シニア(高齢者)の取り組みについては、一緒にアプリを開発させていただきました。シニア(高齢者)を正しく理解して、正しくオペレーションに反映させていくことが、個々のオペレーションの生産性やクオリティーアップに繋がっていくことも分りました。ただし、個々のオペレーションで生産性やクオリティーが上がったというだけではなく、コールセンター全体で生産性が上がったかを検証して行かなくてはいけないと思っています。

TMJ竹内

坂本 なるほど。

竹内 これで、シニア(高齢者)応対については知識を得て、武器(アプリ)を作りましたので、それを形に出来るよう実践して行きます。

坂本 ありがとうございます。嬉しいですね。

竹内 今後、シニア(高齢者)サービスに参入される企業がカスタマーサポートを検討する際には、シニア(高齢者)のカスタマーサポートであれば、真っ先に、是非TMJに声を掛けようという状況になっていたいですね。

木下 オペレーションとして、シニア(高齢者)応対していくということもありながら、近い将来、シニア(高齢者)層がオペレーションをしているという状況も考えないといけません。

坂本 シニア(高齢者)がオペレーションですか?

木下 高齢化社会ということは、労働力として、その層も有効活用していかないといけなくなります。コールセンターの仕事は座ってできますし、技術も進化していきていますので、インカムなどもシニア(高齢者)がしっかりと聞こえるものも開発されるはずです。そんな近未来があるのではないのかなと考えています。オペレーターがシニア(高齢者)であれば、お問合せしてくるシニア(高齢者)の気持ちもわかりますし。

坂本 それは面白いですね。是非その時の技術開発でも、お手伝いさせていただきたいと思います。お声がけ下さい。このあと会場を移してもう少し気楽にお話しできればと思っております。読者の皆様にはここで一旦お別れとなります。本日はありがとうございました。

木下・竹内 ありがとうございました。

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別会場で、食事を楽しみながら談笑中