前号まで、肺から出発した「空気君」が「音源君」に進化し、その後、舌と軟口蓋が複雑に、しかも超高速で動きまわるトンネルを抜けて・・・歯の間をすり抜けて唇から外界へ飛び出して行くお話をしてきました。
最初は単なる空気だったのに、人間の唇から飛び出した時には美しい声になっていたのです。
そして、この声こそが、愛情や友情や、怒りや悲しみや喜びを伝え合うために、私たちの生活に無くてはならない“言葉”を運んでくれるのです。
オト・コラム第4号「人が音を聞くメカニズム(1)~音は、空気の中を漂う~」でもお話しましたが、音とは、物理的には単なる空気の揺れに過ぎません。
声も同じで、物理的には、唇から発せられる空気の揺れに過ぎないのです。
空気は目に見えませんが、例えば、水が満たされたプールの上から水滴を落としたところを想像してみてください。小さな水滴が落ちただけなのに、そこからは波紋が起きて、それはドンドン外側へ向かって広がって行くでしょう?
声も同じです。
唇から発せられた声は、空間に満たされた“空気”の中へ落とされた一滴の雫です。
しかし、その雫から発せられた波紋は、大きく大きく広がって行き、やがて相手の耳の中を満たしている空気をも、揺り動かします。
耳の中には鼓膜があり、この揺れに従って振動し、それが耳小骨から蝸牛に伝わり・・・(この辺りは、もうお話しまたよね?)
そして、聴神経から脳に伝わり、そこで複雑な言語の理解などが行われて、私たちは、愛情や喜びを感じるのです。
目をつぶって想像してみましょう。
あなたの大好きな人の顔を。
その人の唇が開いた時、唇の周りの空気に波紋が起こります。
その波紋は、大きく大きく広がって行き、あなたの耳の中まで入ってきます。
そして、耳の複雑なメカニズムを通って・・・・脳に伝わり・・・
あなたの心は、何を感じたでしょう?
(2009.4.14)