私たちの生活の中で、理由は分からないけれども、何となく気分が落ち着く部屋、もしくは、なぜかイラっとくる場所というのはあるものです。
以前に、ある企業の方に聞いた話ですが、そこの会社では、なぜか険悪な雰囲気になってしまう会議室というのがあるそうで、大事な話し合いの時には、その会議室を使わないようにしているとのことでした。
飲食店などでもありますよね。キレイにしているんだけれども、何となく落ち着かない店って。
以前に、ヨーロッパのある研究者が、五感の中で「人間の“気分”」と最も関係が深い感覚を調べたことがあります。その結果、最も“気分”に大きな影響を及ぼす感覚は、僅差だったらしいですが、
1位 嗅覚
2位 聴覚
だったとか。
これは、学術研究の厳密さから考えると、若干疑わしい部分もある調査結果なのですが、さりとて大外れというわけでもなく、主にマーケティング分野などでは広く参考にされている結果です。
実際、海外の航空会社などでは、客室内の“香り”に気を配った結果、顧客満足度が飛躍的に向上した例もあるそうです。
いずれにしても、人間の気分というものは、直接的な感覚である視覚(見た目)よりも、目に見えない香り(匂い)や音に左右されるもののようです。
ところで、この結果って、日本人にも適用可能なのでしょうか?それとも、ヨーロッパ人だけの特徴?
同様の調査を日本人で行った結果って私は見たことがないので、明確な答えは分かりませんが・・・
私の予想では、日本人では、
1位 聴覚
2位 嗅覚
なのではないかと。これは何も、私が音の仕事をしているから言っているわけではありません。
ヨーロッパでは、香水をはじめとする香料が太古の昔から使われてきました。ヨーロッパ人は匂いにとても敏感で、そして、とても気を使います。ナポレオンは、長期の遠征から帰る前に早馬を飛ばして、自分の奥さんに「今日から私が帰るまで、お風呂に入らないように」と伝えていたという記録があります。こだわるなぁ、匂いに・・・
一方で、日本にも香道という文化はありましたが、香りへのこだわりはヨーロッパ人ほどではなかったように思います。
それよりも日本は、例えば、お庭に小さな小川を作って、せせらぎや鹿威し(ししおどし)の音を楽しんだり、風鈴の澄んだ音で涼感を演出したりと、海外にはない「音の文化」が多い国です。
だから、ヨーロッパ人よりも、聴覚の影響が大きいように思うんです。
音は、人々の気分を良くすることも、悪くすることもできる媒体です。
目に見えないからといって、その存在を忘れないでください。
少し静かにして、耳を澄ましてみると・・・
あなたの今の“気分”を決めてしまっている“音”が聞こえてくるかもしれませんよ。
(2017.6.12)