オトコラム

第65号 騒音の中での会話が、高齢者はとても苦手なのです

テレビの情報番組やワイドショーなどの視聴者の多くは高齢者だそうです。

実際、私が接してきた多くの高齢者の皆さんも、おしゃべりの話題と言えば、家族のことか、あとはテレビで観た情報について。

健康の話、政治の話、芸能人の話、事件、事故の話・・・ほとんどがテレビから得た情報のようです。

その一方で、テレビに出演している方々の話し方を見ていると、「高齢者には、あまり優しくないなぁ」と思うケースが多いように思います。

早口でまくしたてたり、言葉のカツゼツが悪かったり、突然大声を出したり・・・

それと、やたらとBGMを流したり。あれも、高齢者には優しくない場合が多いですね。

訴求効果を期待して流しているのでしょうが、BGMのせいで肝心のセリフやコメントが聴き取れなくなる場合も多いのです。

“カクテルパーティー効果”という言葉を、ご存知でしょうか?

「オトコラム第19号 そんなにみんなパチンコ屋に行くの? ~ カクテルパーティー効果 ~」

でもお話しした、人間が騒音の中で必要な音や言葉を聞き分ける優れた能力のことです。

加齢によって聴力が衰えてくると、このカクテルパーティー効果の能力も衰えてきます。

ですから、騒音の中での会話が、高齢者はとても苦手なのです。

私自身、若いころに比べて、例えば、若い子たちでいっぱいの居酒屋さんなどでの会話が辛くなったと自覚することがあります。

そう、誰でも、年を取るに従って、騒音下での会話が苦手になって行くのです。

だから、若い人たちにとっては単に訴求効果を狙っただけのBGMや効果音が、高齢者にとっては、最も重要なセリフやコメントの聞き分けを邪魔されてしまう場合があるのです。

オトコラムの読者の皆さんなら、もうお分かりでしょうが、これは高齢者のコミュニケーション能力の衰えに関する症状の、ほんの一端でしかありません。

接客業やコールセンターの方々の中には、こういった話にも真摯に耳を傾け、オトデザイナーズの「高齢者とのコミュニケーション講習」を受講されたり、模擬難聴を用いたトレーニングツール「ジェロトーク」を導入し、実際に企業の中で改善して行こうと努力し始めてくださる皆さんが増えてきました。

オトデザイナーズの取り組みが、少しずつ芽を出して来てくれたのかな?なんて、少しうれしくなることも。

でも、それだけでは、超高齢化社会を迎えている日本の、多くの高齢者の皆さんの生活が良くなったとは言い切れないですね。

ここで挙げたメディアの方々だけでなく、もっともっと多くの皆さんに、ほんの少しだけ知識を持って頂いて、ほんの少しだけ気を付けてもらえれば・・・

オトデザイナーズ、まだまだ頑張らねばいけませんね!

(2016.11.10)


△ページTOP