最近は、「歩きスマホ」の危険性が、メディアなどで盛んに言われています。
歩きながらスマホを操作して、他者とぶつかってしまったり、最悪の場合は事故にあってしまったりする事例が増えているそうです。
歩きスマホが危険なのは、誰でも理解できるでしょう。
視覚がスマホに行ってしまうわけですからね。
でも、「歩き音楽プレーヤー」もけっこう危険なんですよ。
雑踏を歩いていると、横や後ろから人や車が近づいてきているのに、全く気付かないで進路を変えることなく直進している人をよく見かけます。
歩きスマホをやっているわけではないのに。
よく見ると、耳にイヤフォン(ヘッドフォン)が・・・
皆さんは、視覚からの情報が失われたら、どんなに困るだろうということに関しては、すぐにイメージできるでしょう。
でも、音や聴覚が、普段の生活でどれくらい役立っているかをイメージできている人は、ほとんどいないように思います。
音は目に見えませんから、なかなかイメージできないのです。
真っ暗闇で、なんの音もしない部屋に、ある人が座っています。
その人の後ろから、音をたてずに静かに近づき、その人の耳をふさぐように手の平をゆっくりと近づけてみます。
もちろん、耳には決して触れませんし、音もいっさいたてません。
真っ暗闇ですから、当然、手の平が耳に近づいていることに気づく人はいない!?
いやいや、大部分の人が気付くのですよ。
これは、実験的に確認されています。
なぜ?
なんの音もしないといっても、空気があれば、必ず何らかの音が存在します。
シーンなんて言われたりしますが、実際にはサーとかゴーとか、かすかではありますが、空気の動きとでもいいますか、常に何らかの音がしているものです。
そして、その音は壁や天井などで複雑に反射し、その反射音同士が混ざり合って複雑にレベルや周波数成分を変化させながら、耳に入ってくるのです。
手の平が耳に近づくと、その反射の様相が変わり、耳に入る音のレベルや周波数が変わります。
その変化を感知して、人は「なにかが耳に近づいた!」と感じるわけです。
そう、これが一般に「気配」とか「場の空気」などと言われるものの正体なのでしょうね。
「歩き音楽プレーヤー」が危険だというのは、人や車が近づいてくる気配が感じられなくなるからなのです。
目に見えない音について、皆さんに、もっと良く知って欲しい。
きっと、生活や仕事に役立つはずです。
学生さんの音響学の“教科書”として利用して頂くとともに、そんな想いも込めて、
蘆原さんと一緒に「音響学を学ぶ前に読む本」を書きました。
ぜひ、ご一読を!
(2016.8.5)