オトコラム

第43号 ベテラン工員さんの耳は精密分析を超える(3)

彼らの神業のような技術は、どこから来るのでしょうか?

「長年の経験」と言えば、もちろん、その通りです。
しかし、そこをもっと踏み込んで、聴覚のどんなところが優れているのかを考えてみましょう。

人間が音の違いを聞き分けるために使っている主な成分を考えると、

①周波数

②音の成分の時間的な変化

③音の強弱

の3種類に大別されます。

ここで、音の強弱は、単に音が大きい、小さいという話ですので、個人差はあるでしょうが、経験を積んでいけば、誰しもが、ある程度は違いが分かるようになるでしょう。

難しいのは、周波数と音の成分の時間的な変化です。

部品や工作機械から出る音では、微妙な“ずれ”や部品の成分や組成の違いで、わずかですが、音の周波数成分に違いが現れます。

この周波数成分の違いが聞き分けられれば、部品の不良を見抜くことが出来るわけですが・・・
周波数の違いは、微妙であればあるほど、聞き分けるのが難しくなって行きます。

これは

“周波数分解能”

と呼ばれる能力で、つまりは、音の高さの違いを聞き分ける能力のことです。

ピアノの鍵盤の“ド”と“レ”の高さの違いは、ほとんどの人が聞き分けられますが、ベテラン工員さんが聞き分けているのは、もっとずっと微妙な高さの違いなのです。

(2012.6.1)


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