オトコラム

第29号 続・耳の衰え
     ~小さい音が聞こえない・・・大きい音は?~

前回、誰でも加齢とともに感音性難聴になって行くこと、
そして、感音性難聴になると高い周波数の音が聞き難くなる、というお話をしました。
とても評判が良かったので、今回は、その続編を書いてみたいと思います。

意外と知られていない感音性難聴の、もう一つの特徴が、

「小さい音が聞こえない。でも、大きい音は普通の人と同じようにうるさい。」

なんです。
ちょっと耳が衰えてきた方が身近にいたとして・・・
普通に話しかけたんじゃ聞こえないみたいだから、大声で話しかけたら、

「うるさい!」

って言われちゃった。
こんな経験をされた方もいるかもしれません。
これは、「リクルートメント現象」と呼ばれる、感音性難聴に特徴的な症状なのです。
例えば、

テレビドラマを見ている時などに、役者の声が小さくて台詞が良く分からないのでボリュームを上げた。しばらくして、物が壊れるシーンなどになった時に、あまりに音が大きいので、慌ててボリュームを下げた。

こんな経験って、ありませんか?
実は私は、40歳を過ぎたあたりから、これを頻繁に感じるようになりました。
ちなみに、中耳炎などから起こる伝音性難聴では、このような事は起こりません。
伝音性難聴では、大きい音も小さい音も、同じように一定の量だけ小さく感じるからです。

リクルートメント現象では、音が大きくなって行くに従って、聞こえの感覚がだんだんと正常な耳の状態に近付いて行きます。
そして、あるレベル以上になると、正常な耳と同じ感覚になるのです。
さらに、「オーバーリクルートメント」と言って、
「小さい音は聞こえない。でも、大きい音は普通の人よりうるさく感じる。」
というケースもあります。
つまり、快適に聞こえる音の範囲が、すごく狭くなるという事なんです。

難聴は、決して、単に耳栓をしただけの状態と同じではありません。
周囲の方がそれを理解しているだけで、コミュニケーションが凄く円滑になる場合もあるん
ですよ。

(2011.02.24)


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