オトコラム

第15号 声のメカニズム(4)
     ~ 舌の根の乾かぬうちに ~

前号では、肺から出された空気君が声帯で細切れにされて、これが“ブザーの音”のような声の元の音になるというお話しをしました。
人は、声帯の動きのスピードをコントロールすることによって、声の高さを変えているんでしたね。

このシリーズの最初で、「人間は皆、いつも超精巧な管楽器を持ち歩いているのですよ」と書いたのを覚えていますか?
管楽器は、吹き込んだ息が管の中の壁に当たって音となり、管の形や長さを変えたりすることによって、出す音の周波数を変えているんでしたよね?

ところで、管楽器に吹き込まれた「息」は、まずは最初に管の端にある発音体にぶつかることによって大きく振動して「音源(おんげん)」、すなわち「音のもと」になるんです。
吹き慣れない人が吹いても、「ズー」とか「ブー」とかいって、ちゃんとした音にならないですよね?
あれは、発音体を利用して息を振動させるのが下手なせいで、音源がうまく作れないからなんです。

そう、声も同じ。
声帯によって細切れにされた空気君は、つまりは細切れにされたことによって大きく振動する「音源君」に進化したのです。
「空気君」の進化形は「音源君」ですね(ポケモンみたいでしょう?)。
そして、この音源君、ここから先も管楽器と同じように、形をダイナミックに変えることができる「菅」を通って行くのです。

この「菅」を作っているのは、舌、口蓋垂(こうがいすい、つまりノドチ○コ・・・です)、上あご、下あご、歯、唇などなど、、、
声は唇から出て行くわけですから、旅の先はまだまだ長いですね。
空気君が進化した音源君の大冒険は、まだ始まったばかりです。

音源君、まずは舌の根っこのあたりに到着します。
ここで試しに、声を出して「こんにちは」と言ってみてください。
周りに誰もいないなら元気よく!
会社や学校なら、小さな声でも結構です。
「こんにちわ」が嫌なら、他の言葉でも構いません。
とりあえず、何かの言葉を声に出してみましょう。

自分の舌が、物凄く忙しく動いていませんか?
はい、もう一度!
「こんにちは」

ね?
舌が凄く忙しく動いているでしょう?
あちこちに当たったり、離れたり、くっついたり。
ダイナミックでしょう?
口の中に出来た管の形が、舌によって大きく変えられているのが分かるはずです。

よく「舌の根の乾かぬうちに」なんて言いますが、旅に出た音源君が最初に出会うのは「舌の根」なんですから、そう考えると、なかなか深い言葉ですよねぇ。

(2008.06.17)


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