オトコラム

第10号 人が音を聞くメカニズム(7)
     ~ 耳の中に“毛”が・・・ ~

最もややこしい部分なのに、前回からすいぶんと時間がたってしまいました。
前回は、耳に入ってきた音に応じて蝸牛の中のリンパ液が揺らされて、そのリンパ液の揺れに応じて基底膜がウネウネと変形するというお話をしました。
さらに、このウネウネの場所が、耳に入って来た音の周波数に応じて変わる・・・・・・・
周波数が高い時は手前側で大きくウネり、低い時は奥側で大きくウネるわけです。

さて、ここで皆さんに衝撃的なお話を一つ!

毛が生えてるんです、耳の中に。
しかも、かなりの本数。
大人も子供も。
若い女性も、おっさんも、おばちゃんも、み~んな生えてるんです。

ムダ毛処理?
ちょっと、ちょっと、絶対にやめてくださいよ!
そんなことをしたら、音が聞こえなくなってしまいます。

基底膜の上には、有毛(ゆうもう)細胞と呼ばれる、毛が生えた細胞が並んでいます。
蝸牛の外側方向に列を作って並んでいるのが外有毛(がいゆうもう)細胞で、内側方向に並んでいるのが内有毛(ないゆうもう)細胞です。
外有毛細胞は3~5列に並んでいて、全部で約25,000個あります。
内有毛細胞は1列で、全部で約3500個あります。
そして、外有毛細胞にはそれぞれに約140本、内有毛細胞には約40本の毛が生えています。

かなり・・・毛深い?

この“毛”の上には蓋膜(がいまく)と呼ばれる蓋(フタ)がかぶさっています。
外有毛細胞に生えている毛は、この蓋膜とくっついてます。
(内有毛細胞も蓋膜の下にありますが、くっついてはいません)
この、基底膜の上に乗っている蓋膜や有毛細胞で作られている構造体は「コルチ器」と呼ばれています。

「コルチ器」

またこれが、聴覚に関連する仕事をしている方々以外の方には、見事に何の役にも立たない知識ではありますが・・・
せっかくですから憶えましょうよ!
飲み会なんかで、「耳の奥の方に、すごいたくさんの毛が生えてるって知ってる?毛の上にはフタがかぶさっててね、、、コルチ器って言うんだよ!」って言ってみましょう。
間違いなく、あなたはその場の人気者に!・・なれるかどうかは知りませんが・・・・・

まとめますと・・・
蝸牛というサザエのつぼ焼きのような形をしたものの中を覗いてみると、中は3つの階に分かれていて、全てリンパ液で満たされています。中を3つの階に分けている薄い膜のうちの一つが基底膜で、その上にはびっしりと、整然と列を作って細胞が並んでいて、そこにはたくさんの“毛”が生えているのです。
蝸牛の渦巻きの外側に並んだ列が外有毛細胞、内側が内有毛細胞です。さらに、その毛の上にはフタがかぶさっていて、外側の列の毛の先っぽは、そのフタとくっついています。
この構造体は「コルチ器」って呼ばれているんですよ。

(2007.07.09)


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