前号まで、鼓膜と耳小骨のお話をしてきました。
この部分は“中耳”と呼ばれている部分で,子供がよくかかる中耳炎というのは,この部分が炎症を起こす病気です。
なった事、ありますか?
すごく痛いんですよね、あれ。
そして今号からは,その先の“内耳”のお話です。
前にも書きましたが,内耳というのは人間が音を聞き,その内容を聞き分ける上で最も重要な器官です。
人体の解剖図などで見たことがあるでしょう?
耳の奥にある,あの渦を巻いたカタツムリのような器官が内耳で,一般に蝸牛(かぎゅう)と呼ばれています。
なんか見た目はグロテスクで,「あの渦巻きは何だ?」って感じですよね?
耳の奥にあんなのが入っているかと思うと気持ち悪いような気もしますが,聴覚にとっては,ここからが本番とも言えるのです。
この蝸牛,とてもとても複雑な構造をした器官で,テキストだけで構成されているこのコラムで,果たしてどこまでご理解いただけるものやら・・・?
はなはだ不安ではありますが,がんばって書いて行ってみることにします!
蝸牛(かぎゅう)は,前にも書きましたが,チューブが渦を巻いたような構造になっています。
“サザエのつぼ焼き”を食べたことがあるでしょう?
楊枝などを使って蓋を外し、中の身をひねりながら上手に引っ張り出して・・・
つるっと上手く抜けました!
やった!
抜き取った、これが蝸牛だと思っていただければイメージとしてはピッタリです。
蝸牛の中は2枚の薄い膜で仕切られた3階建ての構造になっています。
蝸牛の渦巻きを(つまり、上手く抜き取ったサザエを)グンと引っ張って伸ばして真っ直ぐにし、それを輪切りにすると、中に3つの穴が空いているとイメージして頂ければ良いと思います。
この3つの階(穴)の中は、全てリンパ液ですきま無く満たされていて、さらに、このチューブの先端のところで上の階と下の階がつながっています。
ちなみに真ん中の階は、上の階とも下の階ともつながっていません。
上の階と真ん中の階を仕切る膜は「ライスネル膜」、真ん中の階と下の階を仕切る膜は「基底膜(きていまく)」と呼ばれています。
中でも、この基底膜という奴が,人間が音を聞き,内容を認識する上で,とても重要な働きをしているのです。
「基底膜(きていまく)」
これから、たくさん出てくる言葉なのでおぼえてくださいね。
おぼえても、このコラムを読む目的以外にあまり役立つ場面もないかもしれませんが・・・
でも・・・おぼえましょうよ、この機会に!
中耳の耳小骨の最後の骨である“あぶみ骨”は,蝸牛の渦巻きの一番外側にあって、3階建ての上の階につながっている窓にくっついています。
空気中を伝わってきた音,すなわち空気の揺れは,耳の穴(外耳道)を通って中耳に伝わります。
そして中耳は,その揺れを増強し,あぶみ骨を通して、蝸牛の中のリンパ液を揺らすのです。
(2007.04.06)