オトコラム

第5号 人が音を聞くメカニズム(2)
    ~そんなに凄いことをやってるんだ!~

前号で、あなたの鼓膜は、音の波に合わせてユラユラと動くと書きました。
ズバリ!このユラユラが音の正体です。
奥に手前に動く距離が大きければ、それは強い波ということになり、人間は大きい音として感じるのです。
音の大きさって、まずはこんな単純な話なのです。
(本当は、もっと色々と複雑なんですけどね・・・それはまた追々と)

音には“大きさ”と共に“高さ”という重要な要素があります。
“音の高さ”というと、一部の地方では、関東で言うところの“音の大きさ”と同意味になってしまうそうですが、ここで言う“高さ”とは音の高低、音階のようなものです。

鼓膜の揺れが奥に手前に1往復。
人間は、おおよそ1秒間に20往復から20000往復した時に、それを音と認識します。
この1秒間あたりの往復回数は周波数と呼ばれ、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。ですから、人間が音として認識できる(聞こえる)音の周波数の範囲は、20Hzから20000Hz(20kHz)ということになります。

これよりも遅い揺れ、もしくは速い揺れは、音としては聞こえません。
こう考えると、人間が音として感じることのできる“揺れ”というのは、とっても速くて、私が書いた“ユラユラ”といったイメージではありませんね。
そう、あなたの鼓膜はいつも、こんなにすごい目にも止まらぬ速さで揺れ動いているのですよ。

そして、人間が感じる音の高さとは、この揺れのスピードで決まります。
速い揺れの場合(周波数が高い場合)は「キーン」という高い音、遅い揺れの場合(周波数が低い場合)は「ボー」という低い音として感じます。
もちろん、「キーン」や「ボー」は日常生活においては、あんまり役に立たない音です。
それよりも、皆さんが普段から耳にしている色々な音・・・人の声や動物の鳴き声、音楽、自動車のエンジン音、お寺や教会の鐘の音、扇風機のブーンという音などなどなどは、どんな「空気の揺れ」からできているのでしょうか?

全ての音は、様々な周波数の、様々な大きさの音が混じり合ってできています。
様々な周波数の「キーン」や「ボー」が、様々な大きさで、しかも、それらの音の一つ一つが一瞬のうちに消えたり出てきたり、大きくなったり小さくなったり、それはもう、ものすごく複雑に変化しているんです。
人間の聴覚は、このように複雑に混じり合った音という「空気の揺れ」を、その中に含まれる周波数や大きさごとに、瞬時に、バラバラに分解しています。
そして、今、耳に入ってきた音(揺れ)には、どれ位の周波数の音がどれ位の大きさで含まれているか?といった情報を整理して、すぐさま脳に伝えます。

脳は、それらの情報から、その音を人の声であると認識したり、音楽だと認識したり・・・さらにさらに、言葉の内容を理解したり、美しい音に感動したり、身の危険を感じたりしているのです。
これら全ては、耳の穴に伝わってきた空気の揺れを、聴覚というとても優れた感覚で受け止めることから始まっているのです。

「聴覚って、そんなにすごい事をやってるんだ!」って思いませんか?
こんなすごい感覚を、あなたも持っているんですよ!
そして、それを24時間、休むことなく働かせているんですよ!
自分の耳が、何となく愛おしく感じられてきませんか?

(2006.09.19)


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